“海洋レジャーとレスキューボートが活躍する海・根浜へ”
根浜MINDの理事とヨットクラブの理事を務める
三浦勝さん。
震災後、一度は海との関わりを諦めた三浦さんと、
根浜MIND設立に隠された物語に迫ります!
Q1:
はじめに、三浦さんが根浜MINDの一員となり、民間主体のボートレスキュー事業の普及活動に参加している背景を教えてください。
三浦さん:
ボートレスキューの活動について話す前に、私と海、そしてヨットの関わりの話から始めますね。
そもそも、私が海に関わりを持つようになったのは、高校時代にヨット部に入ったことから始まっています。
根浜海岸ではかなり昔からヨットと馴染みが深く、1970年の岩手国体をピークとしたヨット活動の隆盛も経つつ、私個人としては高校を卒業し、社会に出た後もヨットの活動をヨットの活動を続け、国体や全日本の大会にも出場して来ました。
そんな中、3・11の東日本大震災が発生し、大津波によって根浜海岸近くにあった艇庫と収納されていた20艇ほどの全てのヨットはもちろんのこと、(根浜を含む)鵜住居地区の多くの住宅も流されてしまいました。
そして、震災直後は「もうやめよう。海は怖いし、二度と海での活動はできないだろう」と海に関わることを諦めていました。しかし、その後、神奈川や愛知のヨット仲間からの温かい支援もあり、少しずつヨットの活動を再開し始めました。
それと同時に根浜の人たちもなにかできることがないかと、漁業なども少しずつ復活しはじめ、根浜地域全体で少しずつ「もう一回やりなおそうか」という雰囲気がでてきました。
そこで、宝来館の女将さん(岩崎昭子さん)の「それぞれで活動すると力が分散して続かないから、この同じ根浜水域で活動しているみんなが力を寄せ合って何かやった方がいいんじゃないか」という提案をもとに集まったのが、根浜MINDの前身でした。
そして、私も「根浜MINDとして一緒に活動しないか」とお誘いをいただき、「ずっと根浜地域の皆さんに(ヨットの活動をするうえで)お世話になってきたし、なにか手助けできる事がないか」という思いがあったこと、また、「この根浜海岸をヨットの活動ができる状態にしたい」という思いもあり、根浜MINDに加入し、マリンスポーツを経験していた関係で、理事も務めさせてもらうことになりました。
そして、根浜MIND設立のもう一つのきっかけとなったのが、現在根浜MINDの中心的な活動となっている民間主体のボートレスキュー事業のはじまりである「ロビンさんたちとの出会い」です。
震災2年後にアートのプログラムで訪れた際に、根浜地域の津波にやられた惨状を目にしたロビンが、「レスキューボートをもってこよう」という提案をしてくれたところから始まりました。[インタビュー記事も参照]
正直なところ、当時の私たちはロビンさんたちの提案をあまり本気にしていなかったのですが、その2年後(2016年)、ロビンさんは本当に、イギリスから遠く離れた釜石・根浜まで、紆余曲折を経てレスキューボートを持ってきてくれました。あの時は、我々一同本当にビックリしましたね。
しかし、「船を持ってきてくれたことは有難いけど、これからどんな活動をするのか」とはじめは大変困りました。さらには、2016年夏には、ロビンさんたちもウェールズから学生さんを7-8人連れてきて、一番初めのスクールを開くことになりましたが、何をどうしたら良いかわからない、どういうスクールかもよくわからない、どうしたらいいんだろう、というのが正直なところでした。
「せっかくボートももらったし、立派なコンテナ型の艇庫ももらったし、なんとか活動はしていこう」という思いで始まりましたが、我々(根浜MINDのメンバー)はレスキューについては全く未知の世界でわからなかったため、「少しずつ勉強しながら広めていこう」という思いは持ったものの、正直苦しかったですね。
Q2:
苦しいなかで動き出した根浜MINDの活動かと思いますが、活動を進めていくうえで初期にぶつかった困難を教えてください。
三浦さん:
そもそも、ロビンさんたちが活動している英国では、民間が行うレスキュー活動は完全なボランティア活動であり、資金も一般の人たちのチャリティーでまかなっているそうです。しかし、日本ではチャリティーで行う事業はあまり馴染みがなく、レスキューというのは、通常はプロにやってもらうのが大前提です。それを、こんな素人の自分たちができるのかなという大きな不安が第一にありました。
しかし、ロビンさんたちは「一般の人たちがボランティアでやることが大事だ」と強調して伝えてくれたので、我々も少しずつ活動を広げ、民間のボランティアでできることからすすめていくのがいいなという思いを持ちながら続けています。
また、レスキューというと硬いイメージを持たれがちなので、より身近に感じてもらうこと、子供たちにも広くアピールすることを目的に、レスキューボートを使った体験試乗を行い、レスキューボートに興味を持ってもらう「きっかけ作り」も進めています。来年6月から8月くらいまでは、できれば一週間か二週間に一回程度の頻度で土日を利用し、ボートレスキューのスクールを開きたいと考えています。
私は夏にヨット教室も開講しているのですが、子供は興味を持ってくれる一方で、子供たちよりもその保護者さんが「海が怖い」という思いが拭えないみたいなんです。自分たちが怖い思いをした所に子供達を出せません、と。震災から8年ほど経ったので、やっと大人が抱えている海への恐怖心は少しずつ落ち着いてきてはいるのですがね。
Q3:
レスキューボートの活動をしていてやっていてよかったと思うことは?
三浦さん:
一番よかったなと思うのは、ロビンさんたちと国際的なふれあいができるようになったことですね。
今まで根浜地域では外国人と普通に話をすることはなかなか無い機会でしたが、ロビンさんたちと友達になり、国際的な付き合いができるようになったということはすごいことだなと思いますね。そして、そう思う一方で英語力はやっぱり必要だなとも思うんだけれど(苦笑)。
震災を機に、普通では繋がるはずのなかった人たちが釜石・根浜に来てくれるようになったのは嬉しいことですね。
Q4:
今後、根浜地域としてはどのような街づくりを目指して行きたいとお考えですか。
三浦さん:
やっぱりこの海で活動するから、ここを拠点にヨットをしているからっていうのはあると思います。地元の人とのコミュニケーションにもなるし、少しでもこの街の復興のお手伝いができることがあればと思いますし。
根浜MINDとしては、これからいろんな事業を展開していきたいと考えていますが、少なくとも海に関する活動には、自分の知っている範囲での知識や技量は提供できるので、存分に提供できればと思っています。
Q5:
今後、釜石・根浜地域としてはどういう状態になっていくことが理想だとお考えですか。
三浦さん:
海洋レジャーの一つの拠点となり、そこに集まってきた人々をサポートできるレスキュー体制を併せて発展させて行ければいいんじゃないかと考えています。
現状ではまだ復旧復興工事が完了して居ないところも多々ありますが、今後、運動場やレストハウスの建設も進む予定となっており、こんなに綺麗な海があるのだから、私としては、(ヨットやボートレスキューの体験等を含む)海洋レジャーもどんどん発展させていきたいと思っています。
最後に:
これから釜石や根浜について知る皆さんへメッセージをお願いします!
三浦さん:
海はとても素晴らしいものなので、子供たちや若い人たちも怖がらないで、どんどん海に来てください。
海辺の素晴らしい活動もたくさんあるので、みなさんがそういう活動を少しでも経験できるように我々は提供したいと思っているので、どんどん参加してください!